『告白』読みました。

本屋のPOPに釣られたんですよ。「後味の悪い本を読みたいならこれ」みたいな事が書いてあったんで、「よし、どんだけ後味が悪いか読んでやろう」と思って。
本屋でパラパラっと最初の数ページを開いたら。いきなりダラダラと改行は一切無し。コレ、私に読めますかね? と思ったものの、これが読み始めると思っていた以上に気になら無い。
文章力があるんだろうね。ともかく読みやすい。
これは当りかもしれんと、そそくさとレジへ。
 
被害者の母の告白から、加害者Bを好きだった女の子の告白、加害者Bの告白…、というように、「藪の中」(芥川龍之介)や「長い長い殺人」(宮部みゆき)のように、視点が章ごとにころころと変わり、それぞれの思想や思惑を踏まえた観点から読んで行くことになる。
 
だから章によっては。
加害者だって悪気があったわけじゃないのかも? なんてほだされそうになったり。
加害者の家族にも問題がありそうじゃん。なんてぐらついたり。
 
でも、それを最後の最後に、だから何? 心の闇なんて糞くらえ、人を殺したお前が悪いに決まってる、とばかりに叩き切られる。
これが映画なら、「FIN」の文字とともにフェードアウトした処で、加害者Aの大絶叫が聞こえそう。
思わず被害者の母にGJっ。復讐をGJなんて言ったら倫理的に問題あるけれど。ストーリーとして実に上手い。
 
ハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」は、罪には同等の罰が与えられる事とは別に、罪と同等以上の罰を与えてはならない抑制の意味があるのだとか。
 
それならまさにこの報復は、奪われたものを、相手から奪うだけ。
被害者の母は、それぞれの加害者の母親を奪うだけで(加害者の手によってという報復を含むが)、それ以上のものは奪っていない。それにより生じた余波は無論あるのだけれど、加害者が殺人を犯さなければ起きるはずもなかったと一刀両断。
冷静な狂気はいっそ清清しい。
 
こういった内容の本が売れるのってすごいな。
まじめな生徒が損をする学校のシステムとか、自分に酔ってるだけのはた迷惑な熱血教師、被害者の人権を護ろうとしないくせに加害者の人権に気を使うマスメディア、加害者の死刑を求める被害者遺族への人非人扱いのコメント、犯罪評論家の免罪符「心の闇」。
そんなものにどれだけの人がうんざりしているか分かるってもんじゃない?
 
復讐は復讐しか呼ばないなんて、そんな事は誰だって判っている。
これは人殺しが題材にこそなっているけれど。そうじゃなくても。
誰しも、「倫理観」や「人の情」を盾にとられ、振上げた手を下ろせず悔しいを思いをした事はあるんじゃないだろうか?
だからこそ、彼女がその振上げた手で正確に相手を殴り倒した事に喝采を送りたくなる。
 
この物語の後、彼女は復讐される前に自ら命を絶つだろうか?
その覚悟がないからこそ、人は振上げた手を下ろせないのだろうから。
 
面白かったです。
日頃本を読まない人にはお薦めしたくないけど(正気を疑われそう・笑)、ミステリ読みの友人には是非感想を聞いてみたい話ですな。
だがしかし。
 
結局私の当初の目的「後味の悪い」本を読みたいという望みは叶えられてないんだよな。
 
私にはこれってかなりすっきりさっぱり切れ味爽快。
まずいなぁ。
ネットの感想を見るとやっぱり「後味が悪い」ってのが多いよ。
うーんそんなに抑圧されてますかね、私わ(笑)。
 

告白

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