配達あかずきん

下書きだけ書いてすっかり忘れてました。
きっとあとで何か書き足すか調べるかして、それからアップしようとしていたのだと思うけど。
なんかこのまま埋まっちゃいそうなのであげちゃいます。
ちょっとこれだけは、ミステリファンでドウジニアな私が書かなくて誰が書くのよ(笑)と思ったので。


まずはお断りとして。決して嫌いな作品じゃないですよ。
真っ正直な本格ミステリだ、と思って読むとがっくりきちゃったり、アンフェアな処があったりするけど。
日常の謎系列のミステリとして読む分には、というか本好きとしては十分楽しめる。


なにせ、1話だけ立ち読みしてみて「これを全部立ち読みするのは勿体無い」けど手持ち不如意だからとりあえず今度買おう、と立ち読みを取りやめたくらいなんですから。
「配達あかずきん」を読み終えたあとすぐ「晩夏に捧ぐ」を買ったくらいですしね。
ただ「配達あかずきん」の中の「ディスプレイ・リプレイ」だけがどうしても気になった。
そろそろ20年近く同人に係わっているとね。これは、ありえない話じゃないかな、と思ってしまったので。
以下ネタばれです。


現在商業ベースで発売されている大人気のマンガに、10年前同人誌で発表された作品のパクリ疑惑が浮上。
ところが。
その同人誌も実はそのマンガ家が発表したもので、当時同人誌に書いていた名前も住所も嘘でした。
というお話。
あのね、それありえないと思うのよ。
同人誌にも必ず奥付があります。
今だったら本のタイトル・発行日・印刷会社・PN・サイト名・メールアドレスが妥当かな。
でも10年前だよね。
10年前なら、本のタイトル・発行日・印刷会社・PN・お問い合わせ先の住所と本名・というのが当たり前でした。


大手だったら、私書箱とか、事務を担当してくれるお友達の住所・氏名、なんてのも有り得たけど。
大手だとかそんな事は特に書いてなかったしね。


例えば、合同誌だったので奥付は代表者のものだけが載ったとか、ゲストで描いただけだったとしても、そういう場合でもコメントページっていうのが大抵存在していて。そこには。普段こんな本だしてます、お問い合わせ先はこちら。なんてサークルの宣伝を書かれているのが普通。


今ほど個人サイトが浸透していなかった時代だし、個人情報保護法なんて無かった時代だから、同人誌の感想、既刊のお知らせ、通販の送り先、落丁乱丁の問い合わせとか、そういったものは郵便でのやり取りが主だったはず。
本名や住所なんてバレバレです。


そして。今、こんなパクリ疑惑があがったなら。今度はネットがものを言う。
すぐさま、その2人がイコールだって事くらい、検証サイトのひとつもあがって突き止められていると思う。


今年の春に、同人作家の脱税なんて話題がありました。
その作家さんの名前もサークルも私は知らなかったのだけど。
ちょっと検索してみたら、その前に使っていたPNが引っかかってきました。
その名前には記憶があったので、さらに調べて見た処18年くらい前に買った1冊
の同人誌が彼女のものだった事まですぐ分かっちゃいました。
彼女のパクリ疑惑による検証サイトが立ち上がっていたから余計すぐに分かった
んですけどね。


18年ですよ??
そのくらい、マンガ家(同人も含め)の過去作品なんていうのは、ネット上です
ぐさま暴露されてしまうし、情報収集出来てしまうものなんです。
なので「商業ベースで人気のあるマンガが同人誌で発表されたマンガに似ている」。
すわ検証サイトだぁ! なんていうのがあがったとしても。
そこで情報が止まってしまうなんて思えない。
そのパクリ元の本人だって処まできっとバレる。


だって、それ普通に多いし。


某コ/バ/ル/ト作家さんは、「某ジャンルのキャラでコ/バ/ル/トっぽい話を書こう」という企画で発表した合同本の原稿をリメイクした小説で新人賞をとってデビューしているし。
BL系は同人からの青田買いが多いので、同人で発表した作品のキャラを差し替えてリメイクして商業で発表するなんて事は普通に当たり前に行われているし、ブレイク前に同人で発表していたオリジナル作品をリメイクして商業で描いてアニメ化までなっちゃったマンガ家さんもいます。
他にも、デビュー後忙しくなり、同人時代に描きかけで放置していた作品が、デビュー14年目にして商業誌で描く事になった方とか。
デビュー前、某同人小説(正しくはネット小説)に頼まれて挿絵を描いていたのが、7年(実際にはもっと前だけど)たって商業でマンガ化が決まり、作画を担当するハメになった方とか。



ちょっとずれるけど。
商業で人気が出ず発表出来なくなった作品を同人誌で発表し続けている小説とか。
同じく商業で人気が出ず発表出来なくなった作品の続きを同人誌で発表し続けそこで人気が出て商業に返り咲いたマンガとか。
商業ベースで発表している小説の番外編を同人誌で発表して後に商業ベースで「未発表作」としてCDドラマ化した豆文庫の方とか。
某小説のパロを描いていたのが原作者の目に止まり商業ベースでマンガ化する事になった方とか。


同人誌と商業誌って以外と密接してますよ。


まあ実際に、同人(正確には公式ファンクラブ会誌)に載ったパロ小説を、原作者本人が原作でパロった事がファンの知る処となりファンに総スカン(は言い過ぎか)を食らったマンガ家さんなんて話もありますが。
これ全部風聞じゃなく、自分が買ってた同人誌や商業誌がらみのネタですから。
情報収集すればこのテのネタってもっとあるんじゃないかな?


なんていうかさ。
同人誌って横のパイプラインがとてつもなく長い。
彼ら彼女らは、そもそも「何かを伝える」為の媒体を作ってるんだから。
だから、どうしたってこういう情報は漏れ聞こえてくるものなんじゃないかと思う。


そしてもうひとつ。
あのマンガ家さん。
なんでそんな渦中にわざわざ同人誌発表版のキャラを描いたのさ?


ディスプレイに感激して描いたんだったら商業版のキャラを描くはずでしょ?
まだコメントが発表されていないとは思わなかったとか、そんな事じゃなくて。
コメントが発表されたらさ、人、集まるよね。
つまりね。


本屋さんがサイン会を催す予定もないのに、いきなりある作家がやってきて「さぁ今からサインするので並んで、並んで」と言い出したようなものじゃない?
馴染みでもない本屋を勝手に自分の舞台に利用したの。


誰もがそのマンガ家のコメントを読んでいるわけじゃない。
そのコメントが浸透するまでに時間だってかかる。
マンガ家のコメントを知らずにイラストを見てたファンが、嫌悪して、その書店をも嫌悪する可能性だってある。
ならば、普通に考えて、書店の人に一言あってしかるべきじゃない?


逆にまったくパクリ疑惑そのものを知らないファンだっていると思う。
何? このイラスト偽物じゃん、ってそんな「ニセモノを飾っている書店」と笑われるかもしれない。
通りすがりの善人のつもりだったのだろうけれど、これじゃ単なる傍迷惑野郎。


となれば、どうにも作者が、話をでっちあげる為に、無理に謎を作っているように思えてしまう。


「書店の謎は書店員が解かなくちゃ」というコピーはまさにその通り。
同人界の謎は、書店員には向かない謎、だったんじゃないかな。