びっくり館の殺人

とうに読み終わってはいたんですけど。どうにも解せないというか。理解に苦しむというか。
何か読み落としているんだろうか? とか。そんな事があって一切触れてなかったんですが。
とりあえずこういう考え方も可能だよね。と思い至ったので。
以下直接ストーリーには触れていませんが、念のためネタバレ防止。

満腹感には程遠く、物足りなさばかりが気になりました。
館シリーズと思って読んでいたら、読後感は囁きシリーズに程近く。
はなからホラーとして読んでいれば気にならなったのかもしれないのだけれど。

美味しそうな素材ばかり吟味してお鍋に放り込んだはいいけれど、まだ火にかけていない。
生のお肉や、人参や、ジャガイモがゴロゴロ転がって、物珍しいハーブも入れてある。けど、ただそれだけ。何かひとつを齧っても美味しくない。
なんだか、そんなイメージでした。投げ出されっぱなしの謎はどこへ行ってしまったの?
『虚無への供物』への供物にしても、だから何? と思ってしまう。どうせならそこにもうひとつ突っ込んで欲しかった。

思わせぶりにチラッと見せるだけ見せて、こういうわけの分からない魅力的な謎が転がってれば君たちは満足するんでしょう? そう言って作られた(と言われる)『エヴァンゲリオン』の不快さを思い出した。
綾辻さんも読者をそんな風に思っているんだろうか? そう思うと投げたくなった。

けれどここにもうひとつの解釈が出来る。
あの謎はなんだったんだろう? あれには何か意味があるんだろうか?
そんなたくさんのクエッションは、その数が多ければ多いほど、子供たちの小さな頭の中や心の中でコトコトコトコト煮込まれていく。
色んなミステリに触れる事で複雑な味も加わり、それらもまた煮込んで煮込んで形も無くなるくらい煮込まれて、頭も心も柔軟にほぐされ熟成された頃に、また『館シリーズ』を訪ねていらっしゃい。
これはそんな子供たちへの招待状なのかもしれない。

びっくり館の殺人』を読んだ子供たちが大人の本も読めるような年になる頃、『館シリーズ』も、もう少し冊数が進んで、そのタイミングを計って『びっくり館の殺人』の残された謎を解明する『吃驚館の殺人』なんてものがもしかして出たり……なんて事はないのかなぁ?(笑)

びっくり館の殺人 (ミステリーランド)

びっくり館の殺人 (ミステリーランド)